IPv6とインターネット

ここでは、IPv6とは何かを概観し、その背景と特徴、今後の流れを考えてみたいと思います。
また、地方の通信事業者のヒラ社員の立場の筆者が見たインターネットについて述べてみたいと思います。
※多分に筆者の主観が入っていますがご了承下さい。
IPv6開発の背景
IPv6とは、次世代のIPプロトコルとして開発が進められてきたものです。
これまで長年に渡りインターネットを支えてきたIPv4は、インターネットの規模が大きくなるに従ってその欠点も次第に明らかになってきました。
スケールイメージ
インターネットの広がりを背景としたこのような欠点を克服することを主眼に開発されたのがIPv6です。
IPv6の主な特徴
IPv6に対する日本の取り組み
IPv6黎明期から、日本ではKAMEプロジェクトを中心にIPv6を処理するソフトウェア(プロトコルスタックといいます)の開発が進められており、その成果はBSD系のUNIXに取り込まれたり、また日立のルータのIPv6対応のベースとなるなど、大きな成果を上げています。
ネットワークインフラとしては、6bone-jpが早期に立ち上がったのを皮切りに、2000年頃にはISPによる試験サービスが続々と開始されるなどの大きな動きがありましたが、その後、細々と商用サービス化されている以外は若干関心が薄れている感があります。
しかし、2004年に入ってから、IPv6ビジネスサミットの開催など、これまでと違い、IPv6を利用する面から少しずつ盛り上がりを見せています。
IPv4からIPv6への移行は起こるのか
現状、Webを見たりメールの送受信をしたり、世間一般的に「インターネット」と呼ばれる使い方をする上で、IPv4だから困っているという場面はあまりありません。
実際、ユーザから見ればIPv6経由でWebにアクセスしたところで「だから何?」というのが現実だと思います。これがIPv6の普及が進まない1つの原因です。
IPv6の利点として言われていることに対して、今すぐに対応が必要かというと、

また、もう1つIPv6の普及を阻害しているのはIPv4との互換性の無さです。
白黒テレビからカラーテレビに移行したとき、白黒テレビでもカラー放送が(白黒になってしまいますが)見れたように、IPv6がIPv4との上位互換性を持っていれば、現在のインターネットへの普及も、もっと進んだと考えられます。

このようなことから、現在世間一般的に「インターネット」と呼ばれるネットワークがIPv6に移行することは、全世界的に政策的な圧力がかからない限りは恐らく無いのではないかと思います。

IPv6を利用するに当たっての主な問題としてぱっと思いつくものとして、次のようなものが挙げられます。
【参考】
IPv6の本質は何か
これまで見てきたように、Webやメールなど、今の「インターネット」の使い方であればIPv4で十分だと思われます。では、IPv6はどのようなシーンで使われるのでしょうか。
ネットワークイメージ それは、インターネットの代替ではなく「もの」と「もの」がつながる全く新しいネットワークインフラではないかと思います。
この「ネットワークインフラ」と「インターネット」を別個にせず「インターネット」を使えば、ユビキタスな環境が整うではないか、という議論もあります。ただ、現状の「インターネット」と、この「ネットワークインフラ」を同列にし、相互乗り入れをすることによるコスト(IPv4からv6への移行)に対してメリットが大きいとは思えず、この2つのネットワークは別個に存在するべきだと考えます。
トンネリング技術を用いれば、既存のインターネット網を使って容易にこの「ネットワークインフラ」の広域的な構築が可能というメリットはあります。ただ、それが「ネットワークインフラ」たり得るのかどうかは議論の余地があります
【参考】
インターネットは社会インフラたり得るか
若干IPv6とは話が離れますが、もしIPv6の本質がこれまで述べたようなものであるとすると、そのネットワークは真に社会インフラとなることになります。当然、そのインフラが停止した場合の影響が非常に大きくなり、今よりも信頼性や耐障害性が要求されることになります。
しかし、今のインターネットは、個々のネットワーク(AS)が個々のポリシで運用しているバラバラのネットワークがつながっているもので、その規模は誰も把握できていませんし、基本的に性善説に則って運用されているものなのです。
責任の所在があいまいなネットワーク 【問題点】
【参考】
ただし、伝送路障害に対してはなんとか迂回する場合が多いなど、インターネットならではの良い点があるのもまた事実ではあります。

しかし、正直このような実態のネットワークが社会インフラになり得るかというのは大いに疑問が残ります。社会インフラに耐えうるネットワークを構築するには、次のような課題があると考えています。
しかし、これは機能的には昔のSONET/SDH時代の再来という感は否めません。
高機能化するネットワークを本当に安価なままで実現できるのか、通信事業者の苦悩は続くのでした・・・。
インターネットは、本当に「安価」なのか
通信手段としてのインターネットは安価だと一般に信じられている(と思う)。
実際、距離に依存しない料金体系や、IP電話やインターネットVPNなどなんでもインターネット上に乗せられる技術が発達したことから、エンドユーザ的に安価なのはどうやら事実のようである。
では、通信事業者から見たインターネットは果たしてどうなのか。
従来の専用線のような通信サービスと比較してみると、安価になっている面もあれば、逆に高価になっている面もあるであろうことが分かってくる。
【安価な部分】 【高価な部分】 【参考】

これだけ高価になるファクターが多いのに、なぜエンドユーザ的には安価になっているのか?
【結論(言いたいこと)】

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