Photo & Essay

Updated: 2002/06/17

「街の真実」

撮影: 2002/04/13
山口県岩国市麻里布町7丁目

先日後輩と話していると写真の話になった。彼曰く、
「写真って『真を写す』って書くけど、実際はそうじゃないんだよね」
その時は、確かにそうかもしれないなぁ、と漠然と思った。

その後、この写真が仕上がってきた。
岩国の錦帯橋まで自転車で出かけた日、「広島 41km」という標識を、それだけ自転車で走ってきた証として撮っただけの写真。
でも、仕上がった写真を見ると、いろいろな物があまりにもシャープに写っているのだ。

街って、こんなに雑然としていたんだ。

至る所に無造作に掲げてある標識、看板、青空を切り刻むケーブル、行き交う車、ビル・・・。
これが「街の真実」なんだ、そう思った。

田口ランディさんの著した「もう消費すら快楽じゃない彼女へ」というエッセイ集の中に「夜明け」と題された文章がある。
1人の生まれながらの盲人。
でも、何一つ欠損を感じさせない、まるで見えているかのように振る舞う彼。
そんな彼が手術で視力を手に入れた。
28年間の暗闇から抜けて彼が見たものは、寸分の隙間もない一枚の絵。
でも、彼はその画像を解釈する術を持っていなかった。
そして、それまで培ってきた音による平衡感覚、遠近感覚と画像をマッチングさせることも出来ず、彼は追い込まれる・・・。
私は「広島 41km」という標識だけ見てこの写真を撮った。
まさか、こんなにいろいろな標識やモノがファインダーに映っていたなんて、思いもしなかった。
そう、私たちはこんな余計な標識や看板は画像としては眼球の奥に映っていても意識には伝わって来ない。そういう技術をいつしか身につけているのだ。
こんな光景を意識的に見る術しか持っていなかったら・・・、先の彼が見たものとは全く違うかも知れないが、なんとなく共通点めいたものを感じるのだ。

この写真は、私が見た『真』ではない。でも、やっぱり『真』なのだ。


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